熱がある、咳が出る、息切れがする、蕁麻疹が出る、様々な症状で体は不調を訴えてきます。 そんな中、重症化するまでその不調がわからないのが肝臓と言われています。 あまりにも自覚症状が少ないため、「沈黙の臓器」ともいわれている肝臓の疾患を抱えている方は大勢いらっしゃいます。 持病があっても安心できる、しっかりとした保障のついた保険を選ぶためのポイントをご紹介しましょう。
肝疾患とは
肝臓が不調をきたす原因として、まずみなさんが考えるのは「飲酒」ではないでしょうか。 濾過機能を持つ肝臓にアルコールは負担が大きすぎるのでは、と考えていらっしゃると思います。 間違いではないですが、原因はそれだけではございません。 肝炎ウイルスによるものや、薬・自己免疫力によるものなども肝疾患の要因となりえます。 また糖尿病からの肝疾患の併発など、生活習慣病とも深い結び付きがあるのが肝疾患の特徴です。 そして、生活習慣病と関係しているということは、今後肝疾患患者数も増加傾向にあるということなのです。 厚生労働省から発表されているデータによると、肝疾患の総患者数は、約24万人。(消化器系肝疾患の合計。感染症及び寄生虫症の肝疾患(ウイルス性肝炎)は含まれません) 悪性新生物(がん)や高血圧などを含む7大疾病にも含まれます。 平均した入院期間は22.9日間と、約3週間ほどを必要とするというデータも公表されています。 これは悪性新生物(がん)や心疾患と匹敵する日数となることを、皆さんご存知だったでしょうか。 肝臓に余分な脂肪(主に中性脂肪)が溜まった状態を「脂肪肝」といいますが、これも肝疾患を引き起こす大きな要因の一つです。 脂肪肝になると、糖や脂肪の分解や合成がうまく機能しなくなります。 すると高血糖や脂質異常といった状態になり、さらに肝臓での機能が低下するという悪循環に陥ります。 そのような非アルコール性脂肪生肝炎を「NASH」といい、今肝疾患の中でも注目されているのです。
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH: nonalcoholic steatohepatitis)は、過食・運動不足・肥満(特に内臓脂肪型)・糖尿病・脂質異常症などに合併した 脂肪肝を背景として発症する肝炎です。(厚生労働省 e-ヘルスネットより) 肥満人口が増加傾向になる今、NASHの増加も予想されています。
脂肪肝の患者数が多いということは、その後の合併症リスクもそれだけ高まっているということです。 だからこそ、きちんとした保障のある保険が必要になってくるというわけなのです。
肝硬変であっても入れる保険
沈黙の臓器である肝臓に何らかの疾患があった場合、症状が出た時点ではかなり病状は進行しているといったことが多々あります。 肝硬変というのも、何度も破損と修復を繰り返した結果、肝臓が固くなってしまい本来の働きがしづらくなっているという状態を言います。 「肝硬変について」で詳しくご説明しています。 肝臓は体の濾過機能を持っているため、ここに疾患があると様々な合併症が起きるため保険加入の際にもネックになる疾患の一つです。 とはいえ、影響が大きな疾患であるため、もしもの保険が必要な疾患とも言えます。 そこで、持病があっても入れる、しかも保障がしっかりとしている保険の選び方をお教えしましょう。
「引受基準緩和型医療保険」とは
健康であればあるほど、保険の選択肢は広がり加入しやすい傾向にあります。 しかしながら、疾患があるからこそ保険が必要というのが本意ではないでしょうか。 そんな持病を持っていらっしゃる方でも加入することができる保険を「引受基準緩和型医療保険」といいます。
保険の加入条件を一般的な保険よりも引き下げることで、持病があっても加入が可能になります。 ただし、一般的な保険よりも多少割高になってしまうというのが特徴です。 そこでまずは、現在加入している保険や一般的な保険でも加入できないか検討して見る必要があります。 その方法やポイントなどは、 「持病でも入れる保険のご注意点とポイント」 をご参照ください。
「無選択型医療保険」とは
引受基準緩和型医療保険と違い、「無選択型医療保険」とは健康状態を保険会社に告知しなくても加入できる保険のことです。 もちろん保険料が更に高くなることはもちろんですが、「一定期間は、病気による入院・手術が保証されない」という場合があります。 保障内容も限定されたり、加入時に治療中の疾患移管しては対象外になったり、継続ごとに保険料が引き上げられていくなどのデメリットがあります。 もし無選択型医療保険をご検討中であれば、その点は十分にご注意ください。
「条件付き」で一般的な保険に加入する
健康的に何も問題のない方と比べると、保険給付適応になる可能性が高いのが持病をお持ちの方々です。 保険会社はそんな不公平感さを埋めるため、一般的な保険に加入する際に持病のある方には「条件」がつくことがあります。 通常の保険料よりも割高であったり、保険の支払に一定の保留期間を設けるといった条件付けです。 この2つの条件を一度に満たしているのが、先にご紹介した「引受基準緩和型医療保険」になります。 しかしこれでは、保険料が割高になったり、保険金が満額支払われないかもしれないリスクがありますよね。 そこで別の条件というのが、「特定疾病不担保法」と「特定部位不担保法」です。
「特定疾病不担保法」とは、特定の疾病に関して一定期間の通院や手術の保障は行わないというもの。 「特定部位不担保法」とは、特定の部位に関して、やはり一定期間の保障は行わないというものです。 例えば肝硬変での特定疾病不担保期間が3年だったとしたら、保険加入後3年間の間に肝硬変で通院・手術があっても保障されませんが、 4年目以降であれば保障されるといったものになります。 この期間や疾病・部位に関しては、各保険会社で異なるのでよく注意しておきましょう。
「がん保険」で補う
医療保険というのは、手術や入院費用の保障をしてくれるもので、病気になったときの日々の通院が対象外になる場合があります。 しかし「がん保険」の場合、がんと診断された時点で一時金が支払われたり、通院で抗がん剤や放射線治療をする際も保障してくれます。 肝硬変がすぐにがんに直結するわけではありませんが、様々な影響を引き起こすことを考えても、候補としてあげておいてもいいと思います。 医療保険の「特約」という形で保障する方法もありますが、「がん保険」で別に1つ用意するというのも、予算が合えばおすすめする方法です。
加入可能な保険を探す前にできること
持病を持っていても医療保険に加入することができるということは、お分かり頂けたでしょうか。 では次なるステップとしては、「より良い条件の保険に加入するためにどうすればいいか」ということです。 同じ保険料を支払うにしても、保障内容によっては支払金額や条件に差があります。 そこで、ご自身に最適な保険を選ぶ為には「客観的公式データによる正確な情報」が必要となります。 たくさんの保険の中から一番ふさわしい保険を選には、必要な保障内容を把握しておくが重要です。
現在治療中の疾患にかかっている費用を洗い出す
持病というものは、風邪やその他の諸症状のように一時通院して終了というわけには行きません。 長期的に治療が必要で、疾患によっては検査入院や通院治療などが必要となる場合もあります。 その際の通院費や、かかりつけの病院の入院費用などが前もってわかっていると、 加入する保険を探すときの補償金額の目安になります。 また、入院が長期化すると仕事も休まなくてはいけなくなるので収入も減ってしまいます。 その部分も忘れずに試算にいれて考えてください。
とはいえ、日本には充実した医療制度があります。 一定条件を満たせば、「高額医療制度」を利用することができ、支払った医療費の大半が戻ってくることもあります。 一時的に支払う必要はありますが、最終的に戻ってくるのであればそれも見越した保険金額の準備で問題ありません。 高額すぎて支払われるまでの期間が不安という方も、支給見込額の約8割ほどを無利子で貸し付ける「高額医療費貸付制度」を利用することで解消できます。 わざわざ高い保険料を支払う必要もなく、高額医療費制度でまかないきれない(対象にならない)費用分を保険で賄うということです。
通院治療が多い、検査入院は半日で済むなど、治療方法によって様々あるので保障内容を絞るときにも有効です。
最新の健康状態を知る
数年前に持病が発覚し、その後治療を継続している。 そのような場合、手元にある情報としては治療を開始したときのものか、その後定期的に行っていれば、 その時の健康状態に関する情報になります。 保険加入条件というのは、正確であればあるほどにいいとされています。 疾病を隠すと「告知義務違反」となり、加入後に発覚した場合は保険金は給付できず、支払期間がすべて無駄になるということも起こりえます。 そのために、保険会社に提出する情報は可能な限り最新、かつ正確なものが最もよいのです。 そこで担当のお医者様に現在服用している薬の名前と服用ペースなども、保険加入の審査の対象となるので忘れずに控えておいてください。 例えば高血圧であっても、薬を服用することで正常値をキープできる場合は一般的な保険に加入できる場合もあります。 A社では引受基準緩和型医療保険でしか契約できなかった場合でも、B社では通常保険で契約ができたという事例もあります。 条件は各保険会社が独自に査定するものなので、1社が不可であっても全てが不可だとは思わないでください。
健康な方であっても将来の為、老後の為、万が一の為、そのリスクを回避でいればと医療保険に加入されます。 持病をお持ちであればなおのこと、健康不安も大きく将来への安心を得たいと思われるでしょう。 しかし持病の不安を抱えつつ、専門的な話にもふれながらとなると大変な作業となります。 併せてネットで検索しただけでも十数社の保険会社が表示され、その中から適した商品を探すというのもなかなか骨の折れる作業です。 もしご自身では保険選びが難しい、専門家のアドバイスを仰ぎたいなどございましたら、ぜひご相談ください。
- 【参考文献】
- ■厚生労働省「脂肪肝」
- ■厚生労働省「平成29年患者調査(第61表)」
- ■日本消化器病学会ガイドライン「NAFLD/NASH」
- ■全国健康保険協会「高額医療費について」