どうして私たちはがんになるの?
がんはカラダの細胞が分裂するときのコピーミスによって生じます。 私たちの身体は、約60兆個の細胞からできていて、毎日1~2%の細胞が死滅しています。 私たちの身体は、約60兆個の細胞からできていて、毎日1~2%の細胞が死滅しています。 その減った細胞を補う必要がありますが、細胞分裂の際に遺伝子のコピーミスが起きてしまうことがあります。これが遺伝子の突然変異です。
原因はさまざまですが、生活習慣や食べ物、ウィルス、自然界に存在する紫外線や放射線、過度なストレスによる免疫力低下などによって、それらが複合的に蓄積され、遺伝子にキズをつけていきます。
多数の突然変異した細胞は、多くの場合生きていけません。しかし、その遺伝子のうちのある特定の部分にキズがつくと、細胞は死ねなくなり、止めどもなく分裂を繰り返すことになります。
この死ねない細胞が、がん細胞です。そして、そのがん細胞が無秩序に増え続け、やがて塊として「がん」となり、あらゆる臓器や機能を阻害するようになります。
私でもがんになりますか?
がんになる可能性は誰にでもあります。 日本人の男性3人に2人が、女性2人に1人(公益財団法人がん研究振興財団「がんの統計’15」)が生涯のうちがんに発症します。
健康な人のカラダでも毎日たくさんのがん細胞が生まれていて、その数は毎日数1,000個以上とも言われています。日々、このがん細胞を退治しているのが免疫細胞といいます。
しかし、その働きが衰えたり、弱ったりするとがん細胞はその免疫細胞の攻撃から逃れ、がん細胞は蓄積されていきます。 ですので、若くても、これまで病気ひとつしたことがなくても、突然がんが見つかる可能性は誰にでも十分にあります。
もともとがん細胞は、細胞の分裂時に起こるコピーミスにより、自分の細胞から発生したものですから、免疫細胞にとって「異物」と認識しにくい強敵です。さらにがん細胞は、免疫細胞の働きにストップをかけてその攻撃から逃れようとします。
年齢を重ねれば重ねるほど、細胞のコピーミスが起こりやすくなる一方で、免疫力は衰えていきますので、その結果がんになるリスクが高まるということになります。
しかし、女性の場合は、若い世代でがんになる方が多く、乳がんがいちばん多いのは40代後半、子宮頸がんは30代前半が多いです。
「良性」「悪性」とよく聞きますが、その違いはなんでしょう?
がんは浸潤・転移します。異常に増えて塊になった細胞でも、その場に留まっていれば「良性」と呼ばれます。 正常な臓器を圧迫して悪さをすることもありますが、切除してしまえば命にかかわりありません。 一方、悪性腫瘍(がん)は、まわりの正常組織を破壊しながら広がっていきます。(浸潤すると言います)
やがてがんは血管やリンパ管に入り込み、その流れに乗ってほかの臓器にたどりつき、そこでも破壊を広げます。これががんの転移です。
がんがその場に留まっている段階なら治療は比較的容易です。 しかし、がんが生まれた場所の外へ出ていってしまうと(転移)完治は難しくなってしまいます。 ですので、日ごろからの検診などによる早期発見が大切です。
よく聞く病期(ステージ)とはなんですか?
病期(ステージ)とは、がんの進行度の指標です。こちらが進んでいるほど重症度が高くなります。
病期(ステージ)分類の例として「TNN分類」によって、病期(ステージ)大きく0~Ⅳ期までの5つに分類され、0期ではがんが小さく留まっている状態であるのに対し、Ⅳ期に進むほど、がんが拡大している状態です。
<腹腔内および腹腔内臓器がんの臨床病期と治療例>
病期(ステージ)、部位などに応じて三大治療などを単独で、あるいは組み合あせることで最適な治療法が検討されています。 がんの性質や進行度によって、さまざまな治療法がありますので、主治医とよく相談することが大切になります。
がんの治療法はどのようなものがありますか?
多くのがん患者が三大治療を中心に受けています。
その他、三大治療以外にも多くの治療法が存在します。それぞれの治療法はその治療効果と身体へのダメージや副作用などがありますので、主治医とよく相談して、場合によってはセカンドオピニオンの活用をおすすめします。
がんの治療にはお金はどのくらいかかりますか?
がんの進行度や部位、その種類や性質によって治療を選択し、それによってかかるお金は個々異なりますが、基本的には、公的医療制度の対象となる一般的な入院や手術、通院費用や自由診療(保険外診療)や先進医療を受けた場合の費用、その他、差額ベッド代やがんケアのための食事代、サプリメント代、専門機関への交通費など、治癒するための準備が必要となります。
また、治療と併せて、がんになったライフスタイルも見直し、がん緩和に向けて食生活や生活習慣、居住環境などの生活環境を変える可能性も出てきます。その際にも負担が出てきます。
近年では医療の発展もあり、仕事を継続しながら治療を行う方も増えてきていて希望が持てる一方、がん診断後は、サラリーマンの3割以上が退職、自営業では17%が廃業しています。収入も4割程度下がっています。(厚生労働省がん研究助成金「がんの社会学」に関する合同研究班調べ)
長期になりがちの「がん治療」になりますので、毎月の治療費、一定期間(数年分)の治療費や生活費、収入の減少、休職や退職の可能性も想定してお金の備えをしておく必要があります。
がんになると仕事を辞めなければいけませんか?
多くのがんでは仕事を辞めなくても治療と両立することが普通になってきています。最近のがん治療では「長期入院」から「通院治療」へ大きくシフトしています。
仕事を続けることは、経済的な面では当然ながら、やりがいや生きがいという意味でも大きな支えになります。
がんは、かかった人だけの問題と捉えるだけではなく、家族や仲間、会社などのまわりの人たちが、社会全体で支援するべき時代にきています。
一方、「治療と仕事を両立する上で不安・困難だったこと」に関する東京都福祉保健局による調べでは
が上位にきています。
がん罹患者の「収入が減少した」と答えた人の1ヵ月あたりの減少額は平均15.4万円となっています。
がん患者は身体や体調、治療への心配と、毎月の治療費や収入減少への見通しの立たない精神的な不安と、現実的なお金の悩みが中心となっています。
- 出典
- ※1(公益財団法人がん研究振興財団「がんの統計’15」)
- 国立研究開発法人国立がん研究センター
- 公益財団法人がん研究振興財団
- 米国議会がん問題調査委員会「OTA」レポート
- 厚生労働省がん研究助成金「がんの社会学」に関する合同研究班
- 国際がん研究機関
- 米国国立がん研究所