肺がんに次いで年間死亡者数、第二位の胃がん。(国立がん研究センター「人口動態統計によるがん死亡データ1975年~2014年」) 日本は、世界の中でも胃がんの発生率が高く、初期の自覚症状は無いことが多いです。 症状が表れた時には、がんが進行していることが少なくなく、治療が難しいこともあります。 その為、早期発見が重要で、早期がんであれば大半が治癒しますので、定期的な検診を行うのがよいでしょう。 胃がんになった近親者がいる方や、40歳になったら年1回の上部消化器官X線検査(バリウム検査)を、 またX線検査で異常が見つかった方や、胃の痛みや上腹部に不快感等の症状がある方、ピロリ菌感染のある方や慢性胃炎(委縮胃炎)がある方には、年1回の内視鏡検査をおすすめします。
上部消化器官X線検査(バリウム検査)は、健康保険組合の企業や市区町村等で広く行われており、バリウムと発泡剤を飲んで、胃をX線で撮影する検査です。胃の粘膜の凹凸や、胃壁の変形からがんを疑います。 内視鏡検査は、胃の中まで細いファイバースコープを挿入し、胃の粘液を直接観察します。悪性が疑われれば、組織を採取し病理組織検査をします。バリウム検査より、がんを早期に発見出来る割合が高い為、内視鏡検査が行われるようになってきました。
胃がんになるリスクが高いと考えられるこのピロリ菌ですが、強い酸性の胃の中でも生きている細菌で1983年に発見されました。 胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因の一つで、胃がんの発がんにも深く関与していると考えられています。
胃・十二指腸潰瘍の場合は、積極的に治す為にはピロリ菌の除去治療を行います。胃がん予防効果については若年の方が有効ですが、どの段階で除去すべきか等の議論があります。感染があれば胃がんになるリスクが高いと考えられる為、ピロリ菌の感染の有無を知る事が大切です。 ピロリ菌の感染の有無は、比較的簡単な検査で調べること可能で、抗生物質でほぼ除去することが出来ます。
検診の普及から、早期に発見される胃がんが多くなり、また治療技術の向上もあって、早期であれば内視鏡的に切除出来る可能性が十分あります。また外科的切除でも、腹腔鏡下で体への負担の少ない治療が行われています。切除が難しい胃がんの場合は、化学療法が中心です。最近は「TS-1」(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)をはじめ、より有効な抗がん剤が次々と開発され、QOLの改善や延命に繋がっています。
外科的治療を受けた場合、5年間は定期的に腹部CT検査や超音波検査、腫瘍マーカーなどで経過をみる必要があります。内視鏡的に切除出来た場合は、年1回の内視鏡検査で経過をみます。 早期がんであれば大半が治癒しますので、日ごろから定期的な検診を心がけるとよいでしょう。
- 出典
- 国立国際医療研究センター
- 国立研究開発法人国立循環器病研究センター
- 国立研究開発法人国立がん研究センター
- 公益財団法人がん研究振興財団
- 米国議会がん問題調査委員会「OTA」レポート -国際がん研究機関 出米国国立がん研究所